九州絶佳選
福岡
乙野の野舞台−若宮町乙野−
 乙野の天満宮の境内に野舞台(写真下)がある。明治29年に建てられたもので、正面の間口10.6メートル、奥行き6.1メートルの木造の寄棟平屋建築物である。舞台中央部に径3.5メートルの回り舞台が付いている。昭和22年ころまで芝居や演劇などが行われていたという。
 このような野舞台は、近年まで各地に残っていたが、戦後の映画、テレビの普及などによって、芝居の上演などが遠のき取り壊されてしまったものがほとんどである。実際に農村歌舞伎など芝居が行われているところは小豆島の農村舞台など数えるほどしかなく、ほとんど姿を消してしまった。県下には野舞台が3箇所あるがうち2個所は若宮町内にある。
 乙野天満宮の境内に佇むと、芝居で賑わった昔日の面影が舞台に漂っているようにみえる。若宮町宮永天満宮にあるもう一つの野舞台の建築年は明治20年。毎年、万年願踊り(9月25日)が奉納されている。福岡市東区奈多の志式神社の野舞台(志式座、写真下)は、明治28年に久山町の猪野神社から移築されたもの。こちらの方は毎年、初老賀祭(4月1日)や夏の祇園祭(7月19、20日)に使用されている。建物間口18メートル、奥行き8メートルと乙野の舞台より一回り大きく、左右の両側面に楽屋が付き、向かって左手の楽屋を拡大して花道が設けられている。 

野舞台(農村舞台) 回り舞台
志式座