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福岡 |
装飾古墳(王塚)−嘉穂郡桂川町寿命− |
福岡県の中央部に「桂川」という町がある。遠賀川の支流・穂波川と碇川がさらにまたいく筋もの支流に分岐し平野を潤す田園都市である。
町の西方、穂波川に近い丘陵から極彩色の装飾古墳が発見されたのは70年ほど前だった。石室内部は全面に赤く彩色され、前室の入口の左右の石壁に蕨手文や儀仗のための都合5頭の飾り馬が向きあう姿で描か
れ、後室の内部の壁面は屋形の形をした石槨に赤や緑の三角文がびっしりと描かれ、騎馬や盾、靱、同心円文などが壁面を飾る。壁面上部から天上にかけて黄色の円文の宿星が無数に描かれている。全体的に実にモダーンな印象をうける。王塚は、九州に数ある装飾古墳中、最もきらびやかな古墳である。
装飾古墳は、中国や朝鮮半島では随分早くから発達していた。しかし、日本の豪族たちはそれを丸写しにすることを拒んだようにみえる。墓制の違いや壁画の制作技術のレベルの違いになどによるものであろうが、そうしたこの地方の特異性や不自由さがむしろ日本的で独創的な壁画を生む素因となったのであろう。王塚の夥しい三角連続文や盾などは佐賀県田代太田古墳の後室奥壁の壁画などに同様のパーツを認めることができるが、壁画の図柄は同じではない。壁画、壁画に生き生きとした温もりが感じられる。それにしてもこの王塚のきらびやかな荘厳さは日本の装飾古墳の極点をしめすものであろう。
国内の装飾古墳600余の過半は九州に所在する。近年、地方自治体によってその保存、公開に力がそそがれるようになった。王塚古墳についても、展示・学習館(古墳館、写真右上)が整備され、石室(写真)や出土品のレプリカを整えるなどのアイディアもある。大変よい施設である。
毎年、春、秋には王塚古墳を含め、遠賀川流域の装飾古墳が一斉に公開されている。装飾古墳を尋ねる九州の旅もよいだろう。−平成17年− |
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