九州絶佳選
福岡
羽犬塚の風景−筑後市羽犬塚-
お経あげて お米もろうて 百舌鳴いて  <山頭火>
 昭和5年12月、筑後路をゆく山頭火。この日、羽犬塚上町の喜楽屋で行乞の旅装を解いた山頭火。国道209号線傍の地蔵堂(写真の右手前)に「百舌鳴いて」の歌碑が建っている。秋の収穫が終わった12月、お布施の実入りも良かったのであろう。句に余裕が感じられる。
 上町に近い羽犬塚宿は、久留米藩直営の御茶屋が置かれたところ。国道209号沿いの御茶屋跡地に羽犬塚小学校が建っている。御茶屋まわりに植えられていたイヌマキ、ソテツ、ナギなどの木がそのまま校庭に残り、宿のよすがを今に伝えている。ナギは那智の熊野神社の神木とされている木。成長が遅く、神社の境内などでもこれほど大きく育ったナギをみることは珍しい。
 商売繁盛は宿場の願い。クスノキの巨木が茂る六所宮の境内に恵比寿神の石祠(写真左)や猿田彦大神の庚申塔が祭られている。庚申塔は宿場の辻に祭られていたものが明治期に境内に寄せられたものであろう。
 六所宮近くの市役所前では、折から恒例の「羽犬塚宿場の市」が開催中である。今日は「フェスタ羽犬塚2005」(11月5日〜6日)とうたってイベントの開催中。地元商店の出店に加え、竹とんぼなどの竹細工教室や、動物ふれあい広場、子供太鼓、ミニSL、筑前猿まわし、抽選会、新米のすくいどり、歌手のキャンペーンなどが行われ、随分賑わっている。のどかなよい嗜好の祭りである。

 「羽犬塚」という一風変わった地名の由来は諸説あるが、一般には、1587年(天正15年)、豊臣秀吉が九州に進出した際、当地で両翼のある犬の死に出会い、宗岳寺境内の塚に弔ったことに由来すると信じられている。市役所前や羽犬塚小学校の前辺りに両翼のある犬の像が顕彰されている。一度聞くと忘れられない夢のある良い地名である。−平成17年11月−
フェスタ羽犬塚2005