九州絶佳選
福岡
宇美八幡宮の大クス-宇美町-
 宇美の町にクスの大樹に覆われた八幡宮がある。境内の参道や拝殿、本殿の裏手など社周りのクスの大木はゆうに30本はある。衣掛の森、湯蓋の森(写真上)と名づけられたクスは、鬱蒼として千年、いやそれ以上の年月を経ていまなお樹勢盛んな常緑の光を放ち続けている。
 ウロのある大きなクスの根元から生え出たクスが、また数百年の年輪を刻む。これほどの大樹がまとまって繁る社は多くはない。 蒲生の大クス(鹿児島)の前に立つ感慨を髣髴とさせるものがある。
 宇美は、魏志倭人伝が伝える不弥国に比定する者もいるところ。縄文、弥生時代から連綿として文化が花開いた土地である。宇美八幡宮は応神天皇を祭神とし、降誕の地と伝えられる。筑紫から新羅に出兵した神功皇后が帰国後、宇美で応神天皇を出産した記事が日本書紀にみえる。
宇美八幡の安産祈願石 宇美の人々の八幡神への信仰は厚い。折々に宮参りが行われる土地柄。とりわけ安産の神として崇敬をあつめている。境内にうず高く積まれた丸い石は、安産祈願の願い石。妊婦が石を持ち帰り、無事子が産まれると別の石に名前を書いて元に戻す古俗が伝えられている。
 神社の隣に「宇美町立歴史民俗博物館」がある。古代の山城・大野城関係の資料も充実しており、訪れる人の多い資料館である。