九州絶佳選
佐賀
水車の風景(水車の里)-神崎町-
  日本の田園から水車が消えてから久しくなった。頭首工の整備など農業水利の発達や水田の畑地への転換、精米機器の普及などによって作業と維持管理に労力を要する水車が消える運命にあったことは大方予想されたことだった。
 しかし、福岡県の朝倉ではいまなお灌漑用の三連水車や二連水車が健在である。農村の景観や穀物作の歴史や民俗を追体験するため水車が復元、保存されているところもある。佐賀県神崎町の農村公園(写真)の水車は後者の水車であろう。精米、製粉などに実際に使用され、水車米として販売も行なわれている。
  神崎の農村公園の水車は直径4b、7〜10馬力ほどである。50年程前には小渕、仁比山、的地区辺りに60基もあったという。神崎素麺の縁の下を支えていたのである。公害もなく電力も要しない利器であるが、なによりも田園の風景を豊かにしている。