桂浜−高知市−
 土佐の浦戸湾のはづれ(湾口)に桂浜がある。浜の西が竜王岬(写真左)、東が竜頭岬。竜頭岬に坂本竜馬の銅像(写真左)が建っている。
 この浜に幕末の志士の大志を思うには余りにも貧弱にみえるのだが、桂浜は月の名所として名のあるところ。秋の頃、浜に寝転んで月見をするとよいという。
 そういえばこの浜には、月が出たら式を挙げようと誓った若いカップルが浜茶屋のおばさんの媒酌で一緒になったという昔話がある。ゴザを敷き月明かりの下で、織部を持つおばさんの媒酌でカッブルは盃をかわしたのである。桂浜はそのような話がよく似合う浜である。−平成17年6月−
竹林寺−高知市−
 土佐港を見下ろす五台山(標高139メートル)の山腹で、五重塔が瀟洒な姿を南国の空に映している。竹林寺は文殊の寺。四国88箇所第31番札所。本尊は文殊菩薩。文殊菩薩に知恵の出し惜しみはない。シーズンには受験生で賑わう。ペギー葉山の「よさこい節」で有名な「ぼんさん」は当寺の修行僧。
  平安期の厳粛な仏や本堂などの建築物、さらには無窓疎石の作と伝えられる客殿の庭はいうに及ばず、竹林寺は文化伝承の寺。寺に少しも古色を感じさせないのは、文殊さんの現世利益と土佐の開放的な青空のせいであろう。
 樹林に覆われた境内では、諸相の石仏が祀られている。見上げれば、ほんのりと紅をさしたような顔で微笑んでおられる。お遍路さんの顔もなぜか明るくみえる。
竹林寺は、室戸方面から順打ちのお遍路さんを宿毛方面に送り出す寺。遍路にしばしの安堵も授ける寺。寺近くの展望台に登れば、土佐湾が悠久の光を放っている。京都・丹後の「松尾寺」の環境とどこか似たところがある。