ユキノシタ(鴨足草)−西予市三瓶町等−
  鴨足草咲けり持仏に井水汲む   〈舟月〉
  鴨足草ものゝ古根にさくあはれ   〈極浦〉
ユキノシタ
 宇和海にのぞむ。ウバメガシの純林が続く三瓶(町)の山道でユキノシタが咲いている。湧き出る清水が山道を濡らす道端の日陰で2、30センチにも伸びた花茎が頼りなく揺れている。その先端で白く細長い花弁を垂らし、豆粒ほどの花が咲いている。
 ユキノシタは湿地を好み、河川のがけ地や石垣の隙などに自生する。薬用に供せられ、葉の搾り汁が利尿、消炎、湿疹やひきつけなどに効果があるといって庭先に植え、畑の湿地で栽培する家庭もある。常緑で耐寒性に優れ、雪に押しつぶされたり枯れることもない。そのいじらしさを愛でる人もまた多い。
 花は5弁、やや傾いて咲く。上3枚の花弁は小さく先が尖り鮮やかなピンクの斑点がある。下2枚の花弁は細長く垂れ下がり左右の長さが異なる。花托は黄色く花弁の斑点とのコントラストが美しい。花のかたちから鴨の足、虎の耳、猫の耳などとも呼ばれる。鴨足草、猫の耳、虎耳草、きじん草、雪の下とも。異称の多い花。常緑の草本で葉は楕円形。花は細小。見れば見るほど愛らしい花を咲かせる。−平成23年5月−
イチヤクソウ(一薬草)−西予市三瓶町等−
  一薬やうつむき咲ける日蔭かな  (芳月)   
イチヤクソウ
 風通しのよい湿地に群生する。南予では春蘭の生育場所と重なる。ヤマモモや松の樹下で見かけることが多い。
 葉は厚く楕円形。冬も凋まず青々としていてよく目につく。多年生草本。
 春の彼岸のころに花芽をつけ初夏に白い花をつける。下向きに咲き白い花をつける。まれに紫のものがある。毒虫の咬傷に効く。この一草で万病を直すほどの薬効があり、一薬草の語源になったとも。花は愛らしく楚々として美しい。−平成23年5月−