しらうお漁-宇和島市津島町-
 宇和島市の南部に岩松川という川がある。川は北灘湾にそそぎ河口部に津島大橋が架かっている。その橋から左岸沿いに細い街道が通り、老舗旅館や商家が建ちならんでいる。獅子文六の小説「てんやわんや」の舞台となったところだ。
 巡りくる季節がこの海浜の街に新鮮な魚介を送り届ける。南国にも小雪が舞うころ、街の背側を流れる岩松川にきまって「しろうお」が遡上しする。地元では「しらうお」の名で親しまれるハゼ科の魚である。川の半ばに小舟を浮かべ、岸辺から網を張り、上げ潮に乗り産卵にやってくるそれを採捕する。漁法はすくいとるという表現が的を得ている。潮具合を見計らって地引網の要領で円を描くようにして網を手繰り寄せる。布状の網のなかで、体長4〜5センチのしらうおが跳ねている。しらうおは鮮度が大事。網からすくいとられた透明のしらうおはざるに移され、素早くいけすに投入される。食通のおどり食いの食材となるわけだ。漁期は1月20日頃から2週間ほどという。最盛期にはひと網で1升もとれたというしらうおも次第に漁獲高が減少し、今では2〜3合も入ればよいほうだという。新鮮なしらうおはわん種や酢の物でおいしくいただけ、高級食材として珍重される。1月末には岩松川原でしらうお祭りが予定されている。-平成23年1月−
シロウオの季節 有田川のシロウオ漁
青のり採り-宇和島市津島町-

 岩松川のシラウオ漁が盛期を過ぎると入れ替るようにして今度は青のり採りが始まる。
 平成23年2月16日、岩松川の青のり漁が解禁になった。漁期は1週間という。胴長を着て腰まで水につかりながら背丈ほどの大きな熊手で要領良くのりをかいていく。採った青のりは傍らのゴムの浮輪に載せ河岸に運び、河岸で干したり、コンテナに移し替えて家庭に持ち帰り水洗いをして乾燥させる。漁業権は1株2人までとされ、漁期はごく短期に設定される。採りつくさず資源保護にも配意されているわけだ。
  岩松川の青のり採りはシラウオ漁とともに南予の春の風物詩。香りのよい青のりは食してよし。シラウオとともに青のりは岩松川の宝石だ。川のかなたで鬼が城の冠雪がきらきらと輝いている。−平成23年2月−