川上というところ-八幡浜市川上町-
川上
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  八幡浜市の西部に、「川上」(写真上)という地区がある。宇和海に開けた小さな湾を囲むように集落が散在している。湾尻が少し南側に傾き、宇和海の波浪を直に受けにくい地形から海域は比較的穏やかで潮通しもよい。鯛などの養殖筏が海面いっぱいに広がっている。湾の背後の山では柑橘類が栽培されている。湾の西側の上泊集落(写真上方)や東側の白石集落(写真手前)では、山の頂上までミカン畑が開かれ、収穫されたミカンは「カワカミ」のブランドをなす。時折、ミカン畑から幾筋もの潅水が白い放物線を描き落下していく。見事なまでに人々の情熱が注がれた海と山は感動的である。人々が営々として築いた筏、ミカン畑であるが故に、川上地区は一層美しい光を放つのである。−平成16年夏−
菩提の里(三間平野)−北宇和郡三間町−
三間平野  三間は、南に土佐、西に宇和島、北に宇和、大洲に通ずる交通の要衝地である。夏の日、緑の平野の北に、青々とした山並みが続き、それは天と地の架け橋のようにみえる。 三間は平野の乏しい南予の貴重な穀倉地帯である。僅かに色づきはじめた育ちのよい稲穂が秋の豊穣を予感させる。
  三間はまた、四国制覇の野望をかけた土佐の長宗我部氏と九州の大友氏の激戦の地。うまし平野を求めて、両雄が鍔競合ったところだ。野を行く兵馬のまぼろしがみえるようである。
  四国遍路の「菩提の道場」は、宇和島の南、御荘(みしょう)の観自在寺から始まる。同寺から宇和海沿いに北上し、菩提の道は三間へと続いている。お遍路さんは、このたおやかな緑の里に入ると大いに安堵したことであろう。 三間には札所が二寺ある。お遍路さんは、南の龍光寺から仏木寺へとこの広い平野に四季の移ろいを感ながら、また宇和島や大洲に向かう旅人と諸国話を交わしながら田園を往ったことであろう。それはまた、宇和の札所・明石寺へ向かう歯長峠を控え、しばしの安楽であったに違いない。−平成16年夏−