加茂のクス−三加茂町-
  徳島の三加茂という町に、見事なクスの大木がある。JR徳島線の阿波加茂駅と三加茂駅の中間辺りにあって、車窓から森のように見える大木である。樹冠は傘のように大きく開き、縮小すればそのまま盆栽になるかたちのよい木である。樹齢は千年を越え、根回り20b、樹高約25b。樹冠の径は、東西46b、南北40bもある。阿波の老樹の白眉と賞せられるクスである。樹下に立つと、薩摩の蒲生の大クスを髣髴とさせるものがある。
  このような大樹は、気候条件などが重要な要素であることはむろんであるが、神社仏閣の境内地など不伐の森や人の生活圏から離れた未踏の山岳などに残る傾向がある。加茂の大クスもまた、神社(武大神社)の境内にあり大樹に育つ要件を備えている。大クスの南側一帯は水田である。
  樹下を自動車が行交い、クス周りの公園で童が遊びに興じている。時代は移ろっても、いつもとかわらない加茂のいい風景がある。-平成16年12月-