小鳥の風景(メジロ)−高松市−
  自宅のベランダの傍らに植わる桜の木からメジロのさえずりが聞こえる。1羽、2羽・・次第に数が増え、チッ、チッ、チッとにぎやかである。のどかな平和を壊す侵入者はひときわ大きな図体のヒヨドリ。甲高いメジロ1鳴き声で威圧する。逃げるメジロには目もくれずいっときを過ごす。ヒヨドリの飛び去る行方を見定めるようにこんどはスズメが数羽やってきて、狭い枝と枝との空間でチュン、チュンと無心に反復運動を繰り返している。スズメの姿が見えなくなると、再びメジロが1羽、2羽と姿を見せる。窓ぎわで繰り返し、繰り返し小鳥たちの冬の風景が移ろってゆく。
  アパート脇に植えられた桜の木が成長し、自宅のベランダから枝に手が届くようになった。輪切りにしたミカンを枝に刺し様子を窺うと、たちまちメジロやヒヨドリの来訪がある。高松は概して実のなる花木や果樹が多く小鳥の諸相も豊かであるが、冬季は餌が絶える季節、小鳥には受難の季節である。
  市街で暮らす小鳥たちの行動は慎重である。メジロはつがいで行動することが多いが、オスが周囲の安全を確認して近くにいるメスをチッ、チッと呼ぶ仲のよさである。
  四国地方のメジロの体色は、多少個体差はあるが胸から頭部にかけ黄緑地に濃い黄色ないしは橙色の発色がある。九州南部や薩南諸島でみかけるメジロの体色に近いものを感じる。関東、北陸、近畿地方でみかける淡い黄緑色の体色とは明らかに異なるようである。四国の目白は、コントラストがはっきりしていて、なかなか美しいものである。
  メジロは留鳥とされているが、薩南諸島の「硫黄島」の農家から「渡り」をするという話を聞いたことがある。硫黄島の稲村岳の麓で特産・椿油の生産木として椿が栽培されているが、農家は受粉をメジロに頼っている。しかし、近年メジロの飛来が少なく椿が実をつけない、とのことである。鹿児島本土から約100キロメートルもある島にメジロが渡るのだろうか。冬季に、種子島の海岸近くでメジロをみかけたこともあった。大変驚いたが、自然界にはまだまだよくわからないことが多い。-平成16年1月-