宝生院のシンパク−土庄町(小豆島)−
宝生院のシンパク
  小豆島の西部に皇踏山(標高394メートル)が聳えている。山は狭い等高線を描き、一気に海に迫る。その南斜面上に宝生院が建っている。一際高く、鬱蒼とした木が寺の境内を覆っている。遠目には森のように見えるが、一本のシンパク(ヒノキ科イブキ)である。幹周り約17メートル、地上約1メートルのところで三つに枝分かれして、枝のそれぞれが周囲7メートルほどの太さがある。むろん国内のイブキの頂点に立つ木である。樹齢は千数百年と推定されている。地元の人々の崇敬を得て、幹周りに注連縄が張られている。堂々とした見事な巨木である。
  ところで、宝生院のそれはシンパクと通称されているが通例、中国産のものをシンパクといい、日本産の野生種をイブキあるいはビャクシンと呼ぶ。この定義に従うと宝生院のシンパクは「宝生院のイブキ」と呼ぶほうが正確かもしれない。
  小豆島は四国88箇寺のミニ巡拝地。「島四国」といわれ、四国88箇寺巡拝の十分の一ほどの距離を歩けば結願する。歩き遍路して7、8泊、自動車で巡拝すると3、4泊。手軽なこともあって年間10万人ほどの巡拝者が島を訪れる(写真1写真2)。
  シンパクのある宝生院は島四国の札所である。本堂前で、カエデが柔らかな晩秋の陽を浴びて真っ赤に燃えている。遍路が一人、手甲、チャハンに菅笠姿で山門を下っていく。ここにも小豆島の絶唱がある。