土柱−阿波町−
 「土柱」は、吉野川左岸の山間に散在する赤茶け、切り立った断崖である。阿波町の土柱は、規模が大きく奇観である。被災後の崩落現場のようにも見える土柱であるが、土塊の形状は一様ではない。柱状、突起状或いは断崖の中腹で石筍様に生え出たものもある。さらに、壁面に近づくと、獄にあそぶ楽しさと危うさが同居する不思議な気分になり、この土柱に飽きることがはない。
  鹿児島のシラス台地の山麓で、土柱のような切り立った断崖を目にすることがしばしばある。鹿児島の古老は、「ホ」と呼ぶが、土質はシラスで雨水の浸食を受けやすく、壁面をパワーショベルで引掻いたような傷を持つものが多い。土柱とシラスの断崖はその生い立ちは似て非なるものであるが、遠目の姿はたいへん似通ったものがある。