室戸海岸を往く−室戸市等−
  土佐湾をゆったりと海岸線が大きく囲む。弧線の西端で足摺岬が、東端で室戸岬が深く鋭く太平洋にクサビを打つ。
室戸岬に連なる東海岸は概して起伏に富み、外洋に面した海岸線は折から波が高く、浦々でサーフィンなどマリンレジャーを楽しむ若者で賑わっている。海岸に押し迫った山塊の際を、国道55号線が糸を引く。
  徳島から室戸に向け国道55号線をゆくと、磯に砕けた波は噴霧となり、風に煽られ山塊に吹上がっている。岬、岬は墨絵のように濃淡を重ね、はるか室戸岬へと連なっている。
  室戸岬が近づくにつれ、奇岩怪石が目立つようになる。海岸線は自然の展示場。夫婦岩はそうした海岸線の究極の奇観である。神さびてどっしりとそそり立つ岩は、室戸の立神。伊勢の二見岩よろしく注連縄がめぐらせてある。
  室戸岬の先端は、断崖にバベ(ウガメガシ)が密生する岩山。幾層もの段丘の発達具合が確認できる。断崖下に洞窟が二つある。洞窟は、空海の修行の道場だった。岬の断崖上の少し北に「最御崎寺(ほつみさきじ)」がある。
  室戸の茫漠とした奇観世界を埋める「空」と「海」に空海世界があるのだろう。空海は、崖下の洞窟に籠もり「三教指帰」の悟りを開いたのである。
  岬の国道沿いに、「アコウ」の木が自生する。岩盤に張り付き伸びた根は、言いえて妙なタコの木。ヒトツバが樹下を埋めている。。−平成16年7月−