九島−宇和島市本九島−
九島・遠見場から宇和海に臨む
九島・百之浦
 宇和島湾の西に九島という周囲12キロメートルの島がある。宇和島港(新内港)から九島の百之浦までフェリーで10分。養殖や柑橘類の栽培が盛んな人口1,500人ほどの半農半漁の島。島回りは、奇岩怪石の海蝕海岸。岩盤に根を張るアコウの木が茂る島である。特別天然記念物ニホンカワウソの生きた個体が昭和50(1975)年に最後に保護された島。以後、生体の保護事例はなく37年後(平成 24(2012)年)に絶滅したとされている。
 九島の魅力は、何といっても島のミカン畑を巡りながら、農道脇から見下ろすリアス式海岸の眺望であろう(写真左)。紺碧の海に突き出た岬が波打つように延々と宇和島湾に連なり、小島が点々として浮かぶ景観は南予の至宝。目にしみる美しさがある。島一番の高所・遠見場(標高148b、とんば)に立つと、北西に大崎鼻、その向こうに佐田岬半島、南から西側に石応の堂崎、小浜、小池、さらに三浦半島のリアス式海岸が連なり、宇和海の美しい景色がひろがっている。この高みは、藩政期に狼煙場が置かれたところだ。宇和島藩主の参勤交代の上下向を城下に知らせる5場中の最後の狼煙場だった。
 四国の島嶼部では小豆島、直島など島内に四国88カ寺を設けミニ巡拝を行うところが随分ある。九島では二十四輩のミニ巡拝が盛んである。親鸞上人の高弟24人によって開基された関東、北陸の寺を巡拝する「二十四輩」を九島島内に設け巡拝する。西国では非常に珍しい。土地の人は「しわいさま」といっており、春秋の巡拝を欠かさない近在の人も多いという。農道や山道が順拝路になっていて、要所要所に道案内がある。巡拝地は45箇所。島の西半分がコースになっていて、真坂鼻、宇土の鼻などを巡る。1日で1巡できる距離である。宇和海の絶景を眺めながら、山越え谷越えハイキングにもよいコースである。−平成17年8月−