奥南運河−宇和島市吉田町奥浦
 宇和海の複雑な海岸線がいくつもの入り江をつくり、入り江入り江の岬が長く延び或いはその先端からいくつもの小島を連ね、深い溺れ谷をなす宇和海。天気の良い日には岬のはるか向こうに九州の山々が蒼く浮かんでみえる。
 宇和海には佐田岬や由良半島などよく知られた半島はいうに及ばず、有名無名の半島が数えきれないほどある。また、海上交通の利便の確保のため運河を掘った半島がいくつかある。吉田町奥浦所在の奥南運河(航路。目測で延長約200メートル)もそのような運河の一つだ。
 南予の海岸線は国道等幹線道の整備が著しく遅れ、人々はそれらの運河を頻繁に使用したという。西宇和郡の小村から南予のハブである宇和島に向かう人々は漁船に身を託し奥南運河を通過して宇和島に向かったのである。大崎鼻や法花津湾口は難所も多く、天候を気にしながら大崎鼻から一気に奥南運河をめざして航行したことであろう。運河を渡ると半島の先端部は一面、ミカン畑。眼下にブリやヒラメの養殖イカダが浮かぶ。―平成22年12月―