ノジギク−八幡浜市、西予市、宇和島市等−
 冬のころ、南予の海岸線に咲くノジグク。川上、真穴、皆江、下泊、俵津など宇和海の入り込んだリアス式海岸が織りなす絶景に、色づいたミカンとともにその額縁を飾る花。
 ノジギクは、楚々として南予の太陽によく映える。ツワブキの花とともにノジグクは愛媛県人の追憶の花だ。ノジギクは三瓶の町花。西予市三瓶町を流れる谷道川の小橋にノジギクの欄干飾りがある。三瓶訪問の際には谷道川に足を向けられ、川辺に咲くノジギクを鑑賞されるのもよいだろう。
 南予の海岸線は公共交通機関の便に乏しく、かつ海岸部を南下する国道の整備が進みつつあるものの幅員は狭く未だバスの不通区間すらある。また八幡浜から宇和島区間ですら私たちはバスに揺られて一気に南予の絶景を楽しむ機会もない。そのような僻遠の不便さが南予の自然を、奇しくも今日まで保存したといえるだろう。 
 ノジギクは西日本ではありふれた花である。しかし、11〜12月のころ南予の海岸端で或いは断崖をなす岩場にへばりつき、楚々として咲くノジギクは実に美しいものだ。
 ノジギクにはセトウチノジギクとアシズリノジギクの別がある。アシズリノジギクは葉裏や茎に銀白色の毛が生え、全体に白っぽく見える。両ノジギクの分岐点は愛媛県愛南町あたりかと思われる。外泊以南は大方、アシズリノジギクである。高茂岬はノジギクの楽園。11月中旬が見ごろ。南予観光のシーズンオフのこのころ、高茂岬だけは野菊の楽園。野猿が多く、この高貴な花を共に鑑賞するとよいだろう。 ―平成22年12月―


アシズリノジギク(高茂岬)拡大×600px

アシズリノジギク(外泊)