室戸の山頭火−室戸岬−
      わだつみをまへにわがおべんとたうまずしけれども
      われいまここに海の青さのかぎりなし
                                 山頭火
 四国遍路に出た山頭火は、昭和14年11月5日、室戸岬に達した。時化の波飛沫を浴びながら、ひたすら室戸路を歩いた山頭火。この日、昨日の時化が夢のように晴れ上がり、今日の道はよかった、すばらしかった、山よ、海よ、空よと呼びかけたいような日、としるした山頭火。山頭火はあくる日も岬にとどまり、海との対話を重ねるのだった。−平成16年5月−
室戸海岸を往く−室戸市等−
室戸東海岸 ゆったりとした海岸線で囲まれた土佐湾。弧線の西端で足摺岬が、東端で室戸岬が深く鋭く太平洋にクサビを打つ。
 室戸岬に連なる東海岸は外洋に面し、概して起伏に富み、海岸線はサーファーやマリンレジャーを楽しむ若者で賑わっている。海岸に押し迫った山塊に国道55号線が糸を引く。
  徳島から室戸に向け国道55号線をゆくと、磯に砕けた波は噴霧となり、風に煽られ山塊に吹上がっている。岬、岬は墨絵のように濃淡を重ね、はるか室戸岬へと連なる。
  室戸岬が近づくにつれ、奇岩怪石が目立つようになる。海岸線は自然の展示場。夫婦岩はそうした海岸線の究極の奇観であろう。神さびてどっしりとそそり立つ岩は、室戸の立神。注連縄がめぐらせてある。
  室戸岬の先端は、断崖にバベ(ウガメガシ)が密生する岩山。発達した幾層もの段丘が確認できる。断崖下に洞窟が二つある。空海の修行の道場だった。岬の断崖上の少し北に「最御崎寺(ほつみさきじ)」がある。 室戸の茫漠とした奇観世界を埋める「空」と「海」に空海世界がある。空海は、崖下の洞窟に籠もり「三教指帰」の悟りを開いたのである。
  岬の国道沿いで「アコウ」の木が自生する。岩盤に張り付き伸びた根は、言いえて妙なタコの木。ヒトツバが樹下を埋めている。。−平成16年7月−
室戸海岸 室戸海岸 室戸岬