観自在寺−御荘町−
 観自在寺は四国88箇所第40番札所。本尊は薬師如来。「菩提の道」のいざないの寺である。本堂は入母屋造り。
 冬の朝、門前の遍路宿が並ぶ参道を往くと、高い石段の上で総ケヤキ造りの観自在寺の山門が青く澄んだ南予の空に映える。トン、トン、トン・・・啄木鳥の木を打つ乾いた音が境内に響いている。
  山門をくぐり本堂へ向かうと、少し高くなった基壇の上で八体仏が微笑んでおられる。その前をひとりまたひとりお遍路さんがゆく。
  山門脇に芭蕉の句碑が建っている。寺は宇和島藩伊達家の祈願所だった。春の遍路シーズンには、混雑を避けて宵参りする粋な人もいたのであろう。
春の夜や 籠人ゆかし 堂の隅  <芭蕉> 
  須崎の青龍寺、窪川の岩本寺、足摺の金剛福寺、宿毛の延光寺と土佐の南海岸沿いに旅した遍路は、伊予の観自在寺に逗留すると、今度は宇和海沿いの険しい菩提の道をひたすら歩き三間の龍光寺に向かう。観自在寺から龍光寺まで距離にして約50キロメートル。宇和海に深く刻まれた御荘湾の岬、岬を望みながら柏坂を越え、菩提の道を辿るのである。