人麿の海景(下津井)−倉敷市下津井−
 大君の遠の朝廷みかどとありかよふ島門しまとをみれば神代し思ほゆ 
                  <万葉集巻3 304 柿本人麿>
 万葉集に採録された人麿の歌であるが、どこで読まれたものか不明の詠歌。大宰府に通ずる瀬戸内海の島門(海峡)に感嘆して、神代のことが思い出されると人麿は詠っている。そのような情景は、瀬戸内海を挟んで岡山と香川両県間が約9キロと最も接近し、塩飽の諸島が重なり合う今の「島なみ街道」が走る海域を除いて考えられないであろう。
 鷲羽山の岩山と讃岐の霊峰・飯野山(左の写真上方にうっすらと見える山)の剛と柔との対比もよく、水盤に配された塩飽の島々が多島美をかもしだしている。世俗にない海景は、人麿ならずとも神々しさを感じるものである。
 近年、鷲羽山に展望所が整備され、バスの便もある。−平成18年12月−