吉備津神社−岡山市吉備津−
吉備津神社 のびやかな平野が広がる吉備路の田園を県下最大の造山古墳から南方向にぶらりぶらり、野面の寒風に骨身をさらしながら小一時間歩くと中山山麓に開けた吉備津宮内の集落に至る。吉備津神社の門前町として栄えたところだが、今はひっそりとした佇まいの農村集落に化している。

 宮内は吉備津神社の神官賀陽氏の系譜に連なる臨済宗の開祖栄西禅師の生誕地である。臨済禅を始め、筑紫京都などに足跡を残し、喫茶の風を広めた宗教界の巨人だ。 吉備津神社は宮内集落からほど近い、中山の中腹にある。日本書紀にしるされた四道将軍のひとり吉備津彦尊を祀る社。仁徳期の創建と伝えられ延喜式の明神大社。
 長い石段を登り、随神門をくぐると拝殿と本殿がつながった神殿が建っている。備中一の宮であるが、もともと吉備の総鎮守であったという。山陽道有数の古社である。
 神社本殿は鎌倉時代の古風を用いた神仏混淆の比翼権現造(吉備津造)。入母屋破風の建物が二棟、棟を並べる特異な建築である。あいにく修理中で屋根に覆屋がかかり神殿の外観をのぞむことができないのは残念である。
 本殿から西に延び、ところどころで末社と連なる長い廻廊は400メートルほどもある。吉備津神社は備中のよい風景の中にある。旧盆に踊る宮内踊は、歌舞伎の義太夫浄瑠璃の語りで踊る一風かわった踊りである。近年、愛媛県の西予市三瓶町などでも同系のものが見出されている。−平成19年1月−