三原の神明さん−三原市東町、館町等−
 
 だるま市風景
とんど(左義長)
 新酒が旨味を増し、立春が過ぎて梅の花がほころびはじめる頃、三原の東町や館町の路上に植木やだるまが並ぶ。市がたち四百店もの露店が軒を連ねる。2月9〜11日の3日間、三原神明市は30万人とも40万人ともいわれる人出で賑わう(写真左)。
 神明市の期間中、各町内に鎮守の分霊を勧請した祠が建ち、だるまの展示、即売が行われる。人々は、植木を買って、縁起物のだるまを買い換え、1年の幸運を願う。神明さんは備後の春一番だ。まつりは奉納神楽や剣道大会、カラオケ大会と盛りだくさん。三原城主小早川隆景は神明さんの人出を見てその年の景気や富凶を観じたという。
 神明さんは伊勢神宮の祭神を勧請した神明神社のまつり。まつりをお伊勢さんといっているところもある。三原の神明さんはとんど(左義長)の行事と結びついている。とんどは小正月の行事であるが、当地ではなぜか神明さんと結びつき、まつり期間中、JR三原駅前に大きなとんど(写真左下)が立てられまつりのシンボルとなっている。高さ20メートルほどもある大きなものだ。広島県西部地方のとんどとは少し形を異にしている。だるまと神明さんとの結びつきは何なのか。東町の日本一の大だるま(写真上)に両目が描かれており、面壁九年、七転八起に通ずる不撓不屈の面相が新春市の縁起物として人気を得たものか。もっとも販売用のだるまは、願が叶ったときに目を入れるようにできている。三原の神明さんはもともと植木市が主体であったようであるが、この種の春まつりは鹿児島などでも行われている。
 市内の極楽寺境内に青山コレクション達磨記念堂がある。全国各地のだるま約7000体が展示されている。香川の故宮内フサさんの作品など特色のある達磨が多い。三原だるまは豆絞りの鉢巻をした長い顔が特色。浮城まつり(11月)と神明市(2月)の期間中、年2回一般公開されている。
 だるまは張子や木彫など縁起物、玩具として人気があるが、県内には祠に祀られているだるまもある。JR広島駅前の友愛市場北側の通路脇にある祠がそれ。石造のだるま大師像であるが、黒く焼けていて来歴がよくわからないという。よい顔立ちのだるま大師は市場関係者によって大事にされている。−平成19年2月−