林芙美子旧宅−尾道市−
林芙美子旧宅 志賀直哉、中村健吉、柳原白蓮、河東碧梧桐、正岡子規、山口誓子など尾道にゆかりのある文人は多い。急な斜面に三十もの寺院と同居する尾道。高台から眼下をのぞむと因島、大三島、生口島など瀬戸内の島々が指呼の間にある。みなと尾道は、まことによい環境がある。
 尾道のセンター街を歩けば、潮の匂いが漂い、数は減ったが魚を売る行商のリヤカーを見出すこともできる。尾道の町は、なんともゆるゆると時が過ぎる心地よさがある。
 志賀直哉や中村健吉の旧宅が坂のある山手なら、林芙美子の旧宅はセンター街の下町といったところか。
 旧宅は大正6年から7年にかけ、林芙美子が一時住いしたところ。住宅の二階部分を間借りしていて、市立第二尋常小学校(土堂小学校)を卒業し、市立高等女学校(東校)に入学した記念すべきところ。一間の小部屋に木机が置いてある。その名も「芙美子」という喫茶店の裏庭から飛び石伝いに旧宅に通ずる路があり、公開されている。喫茶店に芙美子ゆかりのパネル写真なども展示してあるので、コーヒーを楽しみながら放浪記のことなど思ってみるのもよいだろう。−平成18年7月−