十日戎(今宮戎神社)−大阪市浪速区恵美須− |
商売繁盛 笹もってこい 商売繁盛 笹もってこい |
“笑ひ合ふ十日戎の笑顔かな”十日戎の参拝風景を子規はこのようによんだ。ふくよかな笑顔の戎神に願掛けをする庶民の顔もまた笑顔である。
福娘から銭袋、小判、丁銀、末広、米俵、打出の小槌、鯛などの吉兆を授かり、たわわになった笹を持った人々で今宮戎神社の境内は随分賑わっている。参詣人は拝殿でがらん、がらんと鈴を鳴らして願い事を聞いてもらうのだが、えべっさんは耳が遠いからと言って昔は本殿の裏側に回って羽目板を強く叩いて、「えべっさん、詣りましたで!」と念には念を入れ商売繁盛を祈願したものである。混み合う境内で今日、そのような風は消えつつあるが気持ちはみな同じ“商売繁盛”である。端唄に 十日戎の売り物は、はぜ袋にとり鉢、銭がます、小判に金箱、立烏帽子、ゆでばす、さい槌、たばね熨斗、お笹をかたげて千鳥足・・・とある。
1月9日は宵戎、10日は本戎、11日が残り福。神社の西に南海電鉄、北に阪神高速道路の高架がはしる。今宮戎神社は大都会の谷間の社になったが、いまもやっぱりえべっさんは大阪商人の心強い神様なのだろう。十日戎の日、終日、参詣者が絶えることはない。
戎(エビス)は、もともと漁民が信仰する神であった。豊漁をもたらす神として、今でも漁村に行くと恵比寿或いは恵比須など字は異なるが神社や祠などに祀られている。特に関西以西、対馬に至るまで、漁民の戎信仰は篤い。古来、日本は大陸の文化を受け入れ発展した永い歴史がある。弥生時代から繁栄をもたらすものは常に西方の海からやってきたのである。漁民はそうしたいわば福をもたらす西方の根源を神として祀り、豊漁を祈願したのである。やがて、海浜の「魚市」の守護神として戎神が祀られるようなると、戎神は海浜近くの「市神」に発展し、平野、山間の「市神」へと拡がって行ったのではないか。今日の戎信仰の隆盛は、兵庫県の西宮えびすの戎廻しの活躍に負うところ大なるものがある。金比羅信仰が津々浦々の港に帆を下ろした塩飽廻船による宣伝効果と似たところがあったのだろう。−平成20年1月− |
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