奈良
南法華寺の塔(壺坂寺)−高市郡高取町壺坂−
壺坂寺三重塔
壺坂霊験記
 壺坂寺に、高い基壇に立つ三重塔がある。南北に石階があり、各層の中央間が扉、和洋斗共、二層以上に勾蘭が四方に回してある。塔の創立もたぶん寺の創立のころであろうが、幾たびか再建、修理が施され、美しい塔姿を今日に伝えている。安定感のあるよい塔である。
 寺は鷹鞭山の山頂近くにある。浄瑠璃の壺坂霊験記でよく知られ、中世以降、観音霊場として栄えた寺である。寺の創立は、拾芥抄に大宝3(703)年とあり、南都の僧道基という。帝王編年記や和州寺社記では文武天皇の時代に当てており、創立年が定まらない。しかし、寺域から出土する瓦その他の遺物から概ね文武期の創立とみて間違いはないであろう。