京都
京の街角(ヤツデの花)−東山区本町東福寺退耕庵−
葉の上に こぼれて淋し 花八つ手 <瀾水>
 京都の街が晩秋の淡い陽につつまれ、古刹の甍を師走の風がなめるころ、ヤツデの花が退耕庵の花頭窓に薄墨の影を落としている。
 ヤツデは、晩秋のころ枝の頂部に起立して、円錐形の花序をなし、小さな花を無数につける。権門或いは大寺社の土塀際などでよく見かけ、年の暮れを感じさせる花である。ちょうどこの花が咲くころ、京の街に新酒の酒粕が出回る。
粕汁や 人参の朱 こまやかに <義雄>
 退耕庵は東福寺の塔頭寺院。貞和2(1346)年の創建である。16世紀末に安国寺恵瓊が再興。客殿はそのときの建物。枯山水の庭園や小野小町ゆかりの玉章(たまずさ)地蔵がよく知られている。東山には維新の旧跡が多い。退耕庵は東福寺に長州軍の陣が置かれたことから、同戦役の殉難者の菩提所となっている。
 −平成21年12月−