京都
ノリウツギ
 8月、南山城村の山野を明るく染める花がある。幾重にも重なった尾根の裾野に山田がひらけ、くもの巣のごとそま道が通ずる日当たりのよい山の斜面でノリウツギの花が咲いている。装飾花が花に群がる蝶のようにもみえる。比較的花の少ない季節に野辺を飾るノリウツギは、春のウノハナ(ウツギ)とともにこの地方の代表的な花。ともにユキノシタ科の落葉低木である。花のありようは異なるが、はらはらとこぼれるような頼りなさが両花の特長であろう。それにしても、山城、加茂の一帯は、ノリウツギといいウノハナといいずいぶん濃密に分布する。沢筋でみかけることが多い花。この地方の野山に遊ぶ楽しみの一つであろう。特にノリウツギは、暑い季節に清涼感を与えてくれる花。沢筋でひっそり咲くところもよい。