京都
たけのこさん(篠田神社の筍祭)−綾部市篠田町−
 かんあけや しのだのもりの たけくらべ <芳月> 
御刈上げ
筍の御刈上げ(拡大600pix
丹波の志賀郷(しがさと)に篠田神社が鎮座する。神社は篠田川流域の3町区(篠田、別所、向田)の鎮守である。
 篠田神社に、節分の日に筍(たけのこ)の出具合により農作物の豊凶や風水害を占う行事が伝えられている。
 祭は「お宝まつり」或いは単に「たけのこさん」として聞こえ、この日は遠方からの参拝者も多い。かつては、籠堂に3日間籠もり、日に3度、社傍の篠田川で素っ裸になり斎戒沐浴し、「たけのこさん」に臨んだという。今はそうした禊の伝統は途絶えたが、3町区の氏子は交替で浄衣に身を包み、本殿裏の「御ミノシベ=お宝田」と称する竹林から筍(たけのこ)を鎌で刈上げる行事を斎行してきた。
 祭の当日、日出から午前8時までの間に、筍はお宝田にあがると言う。午前10時半から筍の「御刈上げ」の行事が始まる。神事の後、本殿裏のお宝田に浄衣を着て2名が入る。玉垣で囲われたお宝田は雪に覆われ、繁茂する竹に阻まれながら、筍は次々と刈上げられ、三方に盛られる。筍は30分ほどかけて刈上げられ、神殿に運ばれた。
 農作物の豊凶は、刈上げられた筍の生えていた場所や太さ、長短、色合い、曲折などを観察し、氏子銘々が占う習いである。神職から発表はない。
 稲の豊凶、風水害の占いの要領は、拝殿とお宝田の前に張り出される。参詣の者はこの張り紙を頭に叩き込み、お宝田の周りから玉垣越しに筍の出具合を観察する。夫婦連れ或いは友人らとああでもない、こうでもないと検討を重ねながら、農事談議に花を咲かせ、「ナカテにしちゃろ(しよう)。」などと籾の選定に及ぶ者もいる。このようにしてお宝田の周りは刈上げられた筍雪が踏みならされ、やがてささやかな道ができる。
 高齢者など足元がおぼつかない者は、拝殿及びお宝田の前に展示(写真左)された早稲、中稲、晩稲の筍を観察し、豊凶を予測する。もちろん参詣者も展示の筍を拝み、銘々で豊凶を占う。
 筍さんが行われる節分の時期の時期は、もう寒明けというのに丹波地方の雪はまだまだ深く辺りは5、60センチの雪に覆われている。深い雪の下から生え出る筍の生命力はまさに奇瑞といえるだろう。志賀郷七不思議のひとつ。
 この地方には汲めど尽きない行事に満ちている。−平成24年2月−

お宝田(玉垣の内)
生え出た筍(中央) 篠田神社境内
境内から篠田地区をのぞむ
  参考:茗荷さん
      早竹神社の筍祭