京都
倭文神社の秋祭り−京都府舞鶴市今田−
 西舞鶴に池内という地区がある。丹波高原の西崖に伊佐津川の支流・池内川を刻み、その河岸に棚田がひらけたところだ。上流から順に寺田、別所、池ノ内下、今田、掘などの集落が点在する。川沿いの道を遡ると菅坂峠に至る。道なりに峠を下ると東舞鶴。峠から舞鶴の市街を眺めると舞鶴の湾奥に架かる斜張橋が陽を浴びて美しい。峠の道(府道51号線)を東に進み、トンネルを抜けると綾部市(五泉町)。道は丹後と丹波をつなぐ幹線道。周辺は熊、カモシカの生息域と重なり、自然豊かなところである。
 菅坂峠からもと来た道を下ると‘ドンドコ、ドンドコ'、太鼓の音が谷に木霊する。平成28年10月16日、今日は池内川沿いの集落の鎮守大空神社、池姫神社、倭文神社の秋まつりの本宮祭。池内川の中流域を氏地として鎮座する社が「倭文神社」。池内川の扇状地がひらけたところに鎮座する。難読の社名であるが「倭文」は‘シドリ’と称えられる。社地の氏子は‘イブン’と言うとも。
 午後0時40分頃、倭文神社に3基の神輿が集結。神輿は屋台の形で、曳山になっている。山車の後部に大きな太鼓を据え、両脇に立てた日章旗と日の丸を交差させ、周りは風船や色紙で飾り付けた竹笹が固定してある。ずいぶん高く大きな飾り付けで電線など障害物をくぐるときには笹竹の先端に結わえた縄を引っ張って潜り抜ける。
 曳山の宮入りの様子がちょっと変わっている。山車が倭文神社の鳥居にさしかかると、50メートルほどの参道を1台づつ、猛烈な勢いで山車を曳き、駆け込み、宮入りするのである。
 午後1時から山車に据えた太鼓の競演が始まる。太鼓の打ち手は2名。スリコギ状の太いバチで器用に打ち分ける。太鼓の音は野太く、勇壮、厳かにも聞こえる。祭が近づくと毎土曜日に練習を重ねてきたという。実にうまいものである。よい祭りを観覧させていただいた。
山車の宮入り
 ‘倭文’は‘しどり’と読み、「三河内の曳山祭」(で知られる同名の神社が京都府与謝郡与謝野町にある。‘しどり’は麻の糸や布を意味する。池内地区でも古代に麻を栽培し、機を織る人々が住むところであったのだろう。。この倭文神社は平安時代に編まれた延喜式神名帳に記された式内社である。爾来廃ることなく千年余の歴史を湛えて鎮座する。
 山車の駆け込みは、祭神が荒事好みであったものか。或いは氏神に氏子の参拝を強調するためのものか。駆け込みは筥崎宮の放生会(などでも行われる。