京都
由良川とフナ-綾部市等-

 春は魚族の産卵の季節。4月初旬のころ由良川中流の浅瀬でフナに始まってニゴイ、次にコイなどが次々に産卵する。
 フナの産卵は、4月初旬のころから藻場で始まる。由良川のフナの産卵の盛期は4月の中下旬から約1か月間。しかし、早いものは3月下旬頃から乗っ込み始めるようである。その産卵場はニゴイやコイのように小石が混じる浅瀬ではなく藻場。なかなか観察しづらい。
 3月下旬、由良川の浅場で釣りをしていると抱卵したフナの大物がかかることがあるので多分、このころから乗っ込みが始まるのであろう。


 去る3月30日、綾部井堰の上流でイトミミズの房掛けで立て続けにフナを4尾釣った。最大全長は42㎝、1.05㎏、最小は40㎝、850g。4尾とも40~42センチ、ほとんど差のない型物が揃った(下記の写真)。
 釣りはじめてすぐに1.5号のハリスを切られ、竿は折られてしまった。仕方なく車に積んでいた鮎竿を取り出し、ハリスは4号のカーボンに交換。すぐに当たりがでてヒット。何度も身体を水中に引き込まれそうになりながらフナを次々とゲットした。助っ人はおらず、身体はフラフラ。常備の板切れ(コンパネ)にフナを載せ、メジャーを当ててみたものの魚体は板からはみ出し、魚の大きさに驚くばかりだった。
 しかし、せっかくのフナの大物も急いで寸法を測って写真を撮っただけ。体高比、背びれの棘の仔細、ウロコの形状や縦列の枚数等々はスルーしてしまった。一尾一尾、体形が微妙に異なっていたが40センチオーバーの魚体からゲンゴロウブナ(非学名のマブナとも呼ばれ、別称が多い)と即断してしまった。
 後ほど撮った写真を見ると、体高はカワチブナ(湖国ではゲンゴロウブナをヘラブナと言い、その改良種をカワチブナという。)ほど高くはなく、横からみた体形は4尾ともカワチブナの特徴である菱形ではない。口元も受口ではなく目の位置は高い。
 オオキンブナの可能性もあるが背鰭の軟条数はオオキンブナの14本でなく16~17本。かつ私は40センチ超のオオキンブナを私は見たことはない。
 釣った4尾中の1尾(写真④)は体高が少し低い。ギンブナの可能性も考えられるが、全長、、体色等からみてギンブナ(※)とも考えづらい。

※ ギンフナはその9割以上が雌で、卵からかえった子はクローン。オスはフナでなくともよく、放精によって卵が刺激されクローンが生じる。繁殖形態も稀有。かつての由良川のフナはギンブナであったと思われる。
①40cm・1.05㎏ ②42㎝、1.05㎏
③41㎝、850g ④41㎝、900ℊ

 戦後間もないころ水田の用排水路はフナの産卵場であった。由良川本流筋の中干は7月初旬のころ。小川(農業用水路)でカイドリ(※)をする風景があった。食糧事情が好転した今、それを目にすることはなくなった。

※水路の上下流に堰を設け、水を櫂て(排出して)フナを獲る漁法。

 全国には湖国や利根川の河畔などで、刺身や甘露煮、雀焼きなどでフナを食するところがある。由良川においてもかつては春にコブナ、冬にタナゴを捕って甘露煮やマメと一緒に炊いて食べる風があった。さすがに刺身にする習慣はなかったが、50年ほど前、姉川(滋賀県)の友人宅でフナの刺身(子まぶし)をいただいた。コリコリとした食感があり、大変おいしかった記憶がある。もっとも湖国のそれはゲンゴロウブナかニゴロブナかと思われる。

 由良川で釣りあげた4尾のフナは、いずれも体長40㎝を超えた。魚体の外観からからみてゲンゴロウブナとみられることはすでに述べたとおりである。
 由良川のフナはギンブナ、ゲンゴロウブナ(ヘラブナ)、ゲンゴロウブナとギンブナ等との交雑種が混在すると考えられる。個体間で僅かながらみな異なる形状は由良川のフナのあいだで交雑が繰返しおこっていることを示してはいないか。機会を得てまた観察してみたい。-令和5年3月30日-